
新卒採用は、企業にとって会社の未来を担う若手人材を確保するために欠かせない重要な課題です。
しかし、採用スケジュールの策定を誤ると、良い人材を確保できなかったり、コストがかさんだりする可能性があります。
本記事では、新卒採用スケジュールの最新動向や組み方のポイントについて解説します。
新卒採用スケジュールの動向

2021年卒より経団連に代わって政府が主導の就活ルールになる
新卒採用では、長年にわたり経団連が就職活動のルールを定めてきました。
経団連主導による就活ルールを下記に示します。
- 広報活動:卒業年度に入る直前の3月1日以降
- 選考活動:卒業年度の6月1日以降
- 内定出し:卒業年度の10月1日以降
2021年卒より就活ルールの主導は経団連から政府に代わりましたが、2023年卒までは上記日程を踏襲するとしていました。
さらに、2021年11月30日の「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」にて、2024年卒の採用活動日程も現状ルールを維持することを決定しています。
しかしながら、これらのルールは元々就活が学業に悪影響を与えないように定められた自主的ルールであり、法的拘束力はありません。
そのため、就活ルールはもはや形骸化しており、多数の企業がそれ以前からの活動を行っているのが実態です。
その特徴として、3年生の6月頃から夏季休暇の期間に実施されるサマーインターンシップやウェブサイトによる情報提供があります。
2025年卒よりインターンシップによる採用直結が可能になる
形骸化した就活ルールの解決策として「産学協議会基準に準拠したインターンシップ」が定められ、2025年卒よりインターンシップの位置づけが変わろうとしています。
これまではインターンシップで企業が広報活動や採用活動をすることは禁止されていましたが、一定の基準を満たすインターンシップであれば、企業はインターンシップ中に得られた学生情報を広報活動・採用選考活動に利用できるようになります。
そのため、2025年卒からは「インターンシップからの選考直結」が実現するようになり、実質的な選考解禁が前倒しする可能性が高まっています。
2024年卒の新卒採用スケジュール
2024年卒の新卒採用スケジュール例を「大手企業」「中小企業」「外資・ベンチャー・マスコミ」の3種類に分けて紹介します。
大手企業のスケジュール例
- インターンシップ(夏):2022年6月~9月
- インターンシップ(冬):2022年10月~2023年2月
- 会社説明会・広報:2022年6月~2023年5月
- 選考(試験・面接):2023年2月~5月
- 内定出し:2023年3月~8月
まず実態として、前述の就活ルールの日程よりも早めに動く企業がほとんどです。
その理由は、就活ルールを遵守している企業と選考時期が重なることで、自社の選考を辞退されたり、学生が他の企業へ流れたりすることを防ぐためです。
また、大企業は中小企業と比べて採用スケジュールが早い傾向にあります。
他企業より早めに動くことで優秀な人材を確保することが狙いです。
中小企業のスケジュール例
- インターンシップ:2022年6月~2月
- 広報:2022年6月~2023年8月
- 【第1回】会社説明会:2022年12月~2023年2月
- 【第1回】選考(試験・面接):2023年1月~4月
- 【第1回】内定出し:2023年2月~4月
- 【第2回】会社説明会:2023年6月~8月
- 【第2回】選考(試験・面接):2023年1月~10月
- 【第2回】内定出し:2023年8月~10月
中小企業の採用スケジュールの特徴は、大手企業とずらして説明会や選考時期を設けることです。
具体的には、3~5月以外に説明会や選考のピークを持ってくるようにし、春と秋で2回の採用活動を行うところも多いです。
外資系・ベンチャー・マスコミのスケジュール例
- インターンシップ:2022年6月~12月
- 会社説明会・広報:2022年8月~2023年5月
- 選考(試験・面接):2022年10月~2023年5月
- 内定出し:2022年12月~2023年5月
外資系・ベンチャー・マスコミにおいてはかなり早い時期から採用活動を開始しています。
また、インターンシップが採用につながることも多いです。
時期ごとの学生の動きと企業が準備するべきこと

次に、時期ごとに企業が準備するべきことを各時期の学生の動きと合わせて解説します。
前年5月~8月(前年度の振り返り・インターンシップ)
就活意欲の高い学生は6月頃からインターンシップに申し込み、夏休みを利用してインターンシップに参加します。
この時期の企業は、まず前年の採用の振り返りを行い、今年度の採用課題を抽出します。
次にその課題を踏まえて採用計画を立案し、「採用目標の決定」「スケジュールの作成」「予算・人員の確保」などを行います。
また、学生の夏季休暇に合わせてサマーインターンシップを準備し、開催します。
サマーインターンシップへの学生の参加状況により、秋冬インターンシップの開催を検討すべきケースもあります。
インターンシップは対応する部門との調整が必須となりますので、早めに準備をしておきましょう。
前年9月~11月(採用手法の検討・広報の準備)
この時期の学生は、業界分析や企業分析を開始します。
夏季インターンシップに参加した学生を中心に、この時期から今後選考を受けたい企業を絞る傾向があります。
また、秋季インターンシップに参加する学生もいます。
この時期の企業は、秋のインターンシップを行うとともに、採用手法の検討や広報の準備をします。
「求人票の準備」「採用サイト・パンフレットの制作」「就活サイトの選定」「合同説明会やイベント参加の計画」などを行います。
なお、この時期はインターンシップで関わった学生のつなぎ止めをしておくことが重要です。
インターンシップ中に自社に興味・関心を持ってもらえたとしても、その後の選考フローに乗ってくれるとは限りません。
フォローの方法としては、インターンシップ参加者に対して選考の一部を免除する「選考優待」、インターネット上(メルマガ配信・SNS・LINEグループなど)で継続的にコミュニケーションを図る「オンラインフォロー」、インターン生限定社員座談会などの「リアル接触」があります。
前年12月~当年2月(早期選考・採用活動の最終準備)
この時期になると、早い学生は今まで接点を持った企業の早期選考に進んでいます。
その他の学生も合同説明会に参加したり、就職サイトで企業情報を収集したりと、本格的に企業選定に向けて動いています。
企業側は、3月の広報活動解禁に向けた最後の準備期間となりますが、早期選考を行い、内定出しを始めるケースも多くあります。
年度最後のインターンシップとして冬のインターンシップを開催する企業もいます。
広報に続く選考活動の詳細を詰める作業もこの時期に行っておく必要があります。
当年3〜5月(採用活動開始)
3月の広報解禁を受け、学生は企業の説明会に積極的に参加するようになります。
しかし、近年はインターンシップが活発化したことで、この時期には既に応募する企業を固めてしまっている学生も多いです。
そのため、学生の3月以降の説明会参加社数は年々右肩下がりになってきています。
この時期の企業は、主に説明会と選考を行います。
このとき、採用目標に対する進捗を確認しながら実施することが重要です。
応募が少ない場合は、採用ページのアクセス数などを確認しながら、さまざまな改善を行う必要があります。
売り手市場の現在は企業側からのアプローチも必要でしょう。
求人サイトのスカウトメールやDM機能なども活用しながら、学生に対して積極的にアプローチしてみてください。
当年6〜9月(最終選考・内定者フォロー)
6月を過ぎると多くの学生が内定をもらっている状況ですが、業種によっては6月から選考を開始するケースもあるため、これから選考を受けるという学生もいます。
ここで注意すべきなのが、自社よりも他社の志望度が高かった場合、選考辞退や内定辞退されてしまう可能性があることです。
企業側は、最終選考を実施する時期となりますが、学生に対して選考途中・内定後のフォローをしっかり行うようにしましょう。
当年10月〜入社まで(内定式・入社前研修)
10月に内定式を開催する企業が多いため、多くの学生が就職活動を収束する傾向にあります。
また、入社前研修や内定者懇親会など、企業との接点が多くなるのがこの時期です。
学生にとっては入社前に企業を見極められる最後のタイミングとなるため、内定者や社員と接しながら入社の最終判断を行います。
企業側の活動は、内定式や入社前研修などの対応が中心となります。
この時期には多くの企業が当年度の採用活動を終えていますが、内定辞退等により目標採用数に達していない場合は、追加の採用活動を行う必要があります。
新卒採用スケジュールの組み方のポイント

採用スケジュールを組む際のポイントを3つ紹介します。
採用ターゲットの学生の動向を把握する
採用スケジュールを組む際は、学生の動きを把握することが大切です。
学生の特徴の一例を以下に紹介します。
- 大手や外資系志望の学生は就活のスタートが早い
- 体育会系の学生は就活のスタートが遅く、部活引退後から始める場合が多い
- 理系の学生は4年生になると研究が忙しい
- 公務員試験落ちの学生は、秋冬採用で安定した企業を狙う傾向がある
企業側は、自社のターゲットとなる学生の就活動向や大学行事を確認して採用スケジュールを組みましょう。
大手企業やライバル企業の動向を把握する
大手・ライバル企業の採用開始時期はとても参考になります。
採用手法等も含め、良いところは積極的に自社にも取り入れていきましょう。
特に中小企業の場合は、競合となる大手・ライバル企業と時期が重ならないよう、選考時期を前後にずらすことで、良い人材を獲得できる可能性が高まります。
2、3回目の選考フェーズでは、大手の選考に漏れた学生をうまく誘導できるようなスケジュールを組むとよいでしょう。
前年度の振り返りから戦略を立てる
採用スケジュールを組む際は、前年度の振り返りから始めるとよいでしょう。
まず、前年度の採用目標に対してできたこと・できなかったことを整理します。
次に、できたこと・できなかったことの両方に対してその理由を深掘りします。
これらの振り返りを通して、良かった取り組みは今年の計画にも盛り込み、悪かったことは改善策を考えましょう。
毎年、採用活動のブラッシュアップを続けていくことで、よりよいものになっていきます。
早期選考を行う3つのメリット
採用活動は、選考のタイミングが結果を大きく左右します。
6月の選考活動解禁よりも前に内定を獲得している学生はたくさんいます。
最後に、企業が早期選考を行うメリットを3つ紹介します。
1. 自社にあった学生を確保できる
早期選考を実施することで、多くの学生に接触できるため、自社に合った人材をより確保しやすくなります。
また、優秀な学生は早い段階で内定を決めるケースも多いため、早期の選考開始によって優秀な学生と出会える可能性が高まるでしょう。
2. 早期に採用活動の目標を達成できる
早期から選考開始すれば、その分早くに採用目標を達成できるでしょう。
採用活動が早く終われば、その後の入社準備や振り返りに時間を割けますし、採用コストの削減にもなります。
なお、早期に目標の採用人数を達成したとしても、油断は禁物です。
選考が早く終わることで入社までの期間は長くなるため、その分内定辞退のリスクが高まります。
そのため、余裕ができた時間は内定者のフォローにも注力するようにしましょう。
3. 仮説検証を回して採用活動の質を高められる
選考活動をする際には、多くの改善点が出てきます。
早くから選考を開始し、仮説検証のサイクルを何度も回すことで、採用手法や選考形式をよりよいものにブラッシュアップしていけるでしょう。
自社に適した採用スケジュールを策定して新卒採用を成功させましょう!
新卒採用のスケジュールは、学生や他社の動向を把握しながら、企業独自の採用戦略をもとに組み立てる必要があります。
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