
求人採用コンサルティング、ナインデザインの牛川です。
人材不足が叫ばれる現在の日本では、すべての社員が長く働き続けられる環境を整え、離職率を下げることが企業の成長には欠かせません。
こうした中、近年注目されているのが「リテンション・マネジメント」です。
企業の魅力を高め、人材の流出を抑えるリテンションマネジメントについて詳しく解説します。
リテンションマネジメントとは何か
リテンションマネジメントとは、自社で働く従業員が長く働き続けられるようにするための取り組みのことです。
社員の定着は、社員と会社の双方にとって多くのメリットがあります。そのためには、社員が長く働き続けられる環境を整えることが重要です。
従業員の意見を聞き入れ、継続的な改善のための支援と指導を行ったり、成長のための環境・報酬や福利厚生を提供することがリテンションマネジメントでは必要です。

リテンションマネジメントが注目されている理由とは?
人材・労働力不足
日本各地で人材・労働力不足が叫ばれています。
少子高齢化により、10代後半から60代までの「労働力世代」の人口が減少し、高齢者の退職が進み、人材が不足しています。また、求職者数よりも求人数の方が多い、いわゆる「売り手市場」も人材不足の要因のひとつです。
このような状況下、日本国内の企業では、従業員の精神的なサポートや従業員の雇用環境だけでなく、外国人労働者の雇用に前向きな声も聞かれるようになりました。
企業が多様化するにつれ、人事部門が直面する課題も複雑化し、困難になってきています。
さまざまな従業員のニーズに応える必要があるため、人事部門はビジネスのニーズの変化に応じて方針や規則を調整する準備をしなければならないのです。
離職率の増加
終身雇用が当たり前だった時代とは異なり、現代では労働条件が良くない、人間関係や社風が合わないと感じたら転職することが一般的になっています。このような状況を受けて、多くの企業が人材の確保に向けた取り組みを行っています。
厚生労働省のデータによると、72%の事業所が何らかの施策を実施しています。職場のコミュニケーションの改善」「能力・適性に応じた配置」「採用前の丁寧な説明・情報提供」など、多くの企業で対策がとられているようです。
ですが、離職率は依然として高く、これらの取り組みが当初の目的ほど効果を発揮していない可能性があります。

具体的にどうすれば良いの?人材定着のために見直すポイント
社内コミュニケーションを活性化させる
快適で働きやすい職場にするためには、職場の風通しを良くすることが必要です。
社員同士がコミュニケーションを取れる環境を整えることで、仲間意識や協力する気持ちが芽生えてきます。人間関係が深まれば、人材も確保しやすくなる傾向があります。
例としてサンクスカードの活用などがあります。
サンクスカードは、自由に手に取れるカードを用意して簡単にコミュニケーションを図れる方法です。
デジタルのツールを活用すると数クリックで感謝の気持ちを送れるようになり、気軽にコミュニケーションをとることができます。
社員同士が褒め合う風土を作ることで、社内のコミュニケーションが活発になるでしょう。
キャリアやライフプランに関する支援を行う
社員のワークライフバランスを尊重する企業姿勢は、これからの企業経営に欠かせません。
社員がプライベートな時間を楽しむことができない企業は、優秀な人材から敬遠され、社員の離職につながる可能性があります。
例えば、社員に膨大な仕事量を与え、残業を容認するしてしまう会社は、社員の満足度が低下してしまいます。
バランスの取れた職場作りのために、労働時間の短縮や副業の許可など、社員の生活や心の安全を守るための施策が必要といえるでしょう。
さらに、緊急時以外は残業を求めないなど、社員がリフレッシュできる休暇を確保していくなどの対策が必要です。
働きやすい環境を整える
人が集まれば、人間関係の摩擦やコミュニケーションの過不足などの問題が発生することがあります。
また、衛生状態や職場の窮屈さなど、劣悪な職場環境が問題になることも少なくありません。ちょっとしたことが大きな不満につながるので、職場環境を細かくチェックし、総合的に改善することが大切です。
小さなことのように思えるかもしれませんが、スタッフが働く環境を管理することは、満足度と効率性の両面で欠かせません。
まず、仕事場の環境が整理整頓され、清潔であることを確認し、すべての従業員が快適に仕事に取り組める環境を確保することから始めましょう。
さらに、社員同士のコミュニケーションの取り方などの面もチェックし、必要に応じて改善する必要があります。
上司の社員への接し方、社員の同僚への接し方、新人の受け入れ方、フィードバックが常にオープンで誠実な態度で行われているかなど、さまざまな観点から検討する必要があります。

会社の方針や姿勢を示す
人材育成など会社の方針を随時見直すことで、社員は会社に対する期待感を持つことができます。そのためには、社員一人ひとりと定期的に面談を行い、目標管理を実施することです。
定期的な面談を行うことで、企業も従業員のニーズをより注意深く見つめ、個々のニーズに合った方針を打ち出すことができるでしょう。そうすることで、社員は「この会社は自分達の成長を支援してくれている」と感じ、満足度を高めることができます。
また、従業員のスキルレベルを表すスキルマップを作成し、計画的に人材配置を実施することもお勧めします。
評価制度を整える
人が人を評価する以上、ばらつきが生じたり、理不尽な評価が疑われたりする可能性があります。
だからこそ、人事評価制度を明確にし、全社員に周知徹底することが重要です。
何をすれば高く評価されるのか、何を基準に昇進するのかが明示され、信頼できる制度として運用されていれば、不満が出る可能性は低くなるでしょう。
また、個人の成長に伴うキャリアプランのロードマップを提示することも重要といえます。
同時に、上司が部下を評価するという形ではなく、複数の目で見る評価制度を導入するのもよいでしょう。上司からの評価だけでなく、同僚からの評価、場合によっては部下からの評価も効果的です。

リテンションマネジメントの実例3選
クックパッド
レシピ投稿・検索サービス「cookpad(クックパッド)」を運営するクックパッド株式会社。
クックパッド株式会社は、社員の自主的な活動を支える制度や文化が豊富なだけでなく、チームの一員としてのメリットが非常に魅力的な会社です。
毎日新鮮な食材を仕入れる大きなアイランドキッチン、約2ヶ月間他部署の仕事を体験できる「社内留学制度」、コアタイムを設定しないフルフレックス制など、充実した制度が整っています。また、5人以上のグループで申請できる「部活動費」の支援も行っています。
最も特徴的なのは「まかない」制度です。これはクックパッド株式会社独自のもので、社員のコミュニケーションの場であり、社員の満足度を大きく向上させているようです。
株式会社ヒューゴ
株式会社ヒューゴは、大阪に本社を置くITコンサルティング会社です。
同社は、柔軟な働き方を支援する制度を導入しています。
午後1時から4時の間に3時間の昼休みを取り、職場で自由な時間を過ごすことができる「シエスタ(仮眠)制度」を導入しています。2018年からはテレワーク制度を導入し、社員がより自由に働けるようになり、拠点がどこであっても一緒に働ける環境が整いました。
昼食後の眠い時間帯に長めの休憩を取ることで、社員はリフレッシュして午後の業務に集中することができ、効率アップにつながります。
この制度は、リモートワークの場合にも有効で、非常に柔軟な働き方が可能です。休憩時間が長い分、終業時間が遅くなりますが、早く帰るためにシエスタタイムに休憩を取らずに仕事をする、という選択肢もあります。

サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社は、企業向けグループウェアやクラウドサービスの開発・販売・運用を行う企業です。
「100人いれば100通りの働き方がある」という考えのもと、働き方改革に取り組んでいます。社員が働く場所や時間を自由に決められ、会社に断りなく副業することも可能です。
また、保育施設がない、保育園に行きたがらないなどの問題に対して「子連れ出勤制度」を用意し、親が仕事を取り入れやすくしています。また、社内イベントやクラブ活動への参加、ネットワーキング・コールや社内チームランチなど、社員同士の絆を深める機会も多いです。
サイボウズでは、社員の定着とワーク・ライフ・バランスの充実を図るため、フレックスタイム制やリモートワーク、各種福利厚生制度など、社員が長く働き続けられるような制度を導入しています。
社員に長く働いてもらうためには
人材の定着率を高めるためには、「今働いている社員に、いかに長く働き続けたいと思わせるか」を考え、リテンションマネジメントを実践することが重要です。
そのためには、柔軟な働き方、社内コミュニケーションの活性化、福利厚生の充実など、さまざまなアプローチが考えられます。自社に合ったリテンションマネジメントを行い、人材の離職を防ぎましょう。
また、採用の時点でミスマッチを生み出さないことも重要です。
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